Jazz Standard — 1930
タイム・オン・マイ・ハンズ
| 作詞 | Harold Adamson & Mack Gordon(ハロルド・アダムソン/マック・ゴードン) |
|---|---|
| 作曲 | Vincent Youmans(ヴィンセント・ユーマンズ) |
| 制作年 | 1930年 |
| 初演 | ミュージカル『Smiles』(1930年ブロードウェイ)でMarilyn Miller、Paul Gregoryが歌唱 |
| キー | C(ハ長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節・AABA形式 |
1930年、作曲家ヴィンセント・ユーマンズが、作詞家ハロルド・アダムソンとマック・ゴードンの二人と共に書き上げた一曲です。ミュージカル『Smiles(スマイルズ)』のために作られ、当時絶大な人気を誇ったスター、マリリン・ミラーとポール・グレゴリーによって歌われました。皮肉なことに、このミュージカル自体はわずか数週間で幕を下ろしてしまう不振な公演でしたが、劇中歌の一つであった本作だけは、80年以上を経た今もなお歌い継がれる息の長いスタンダードとなりました。ミュージカル自体はほとんど忘れ去られてしまったにもかかわらず、この一曲だけが独り歩きして生き残ったという点で、当時のブロードウェイでもしばしば見られた現象の典型例とも言えるでしょう。1940年にはビリー・ホリデイが録音を残し、その後もベン・ウェブスター、オスカー・ピーターソン、デューク・ジョーダンら数多くのジャズ・ミュージシャンに取り上げられてきました。マリリン・ミラーの半生を描いた1949年の伝記映画『Look for the Silver Lining』でも、この曲が再び用いられています。
歌の情景・意味
あなたと二人きりで過ごす時間さえあれば、他には何もいらない——そう歌う、シンプルで愛らしい恋の歌です。「手にした時間、腕の中のあなた」というフレーズに象徴されるように、忙しない日常から離れ、ただ愛する人と静かに向き合う時間そのものが、この上ない幸福だと語られます。派手な誓いや大げさな言葉はなく、夕暮れが訪れ、あたりが薄暗くなっていく穏やかな情景の中で、二人だけの時間をゆっくりと味わう——そんな、飾らない親密さが魅力の一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:C(ハ長調) 形式:AABA(32小節)
穏やかで親しみやすい、素直なツーファイブ進行が特徴です。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:ハ長調の主和音を中心に、Ⅰ→Ⅵm→Ⅱm→Ⅴという定番の流れが2回繰り返されます。歌詞の「愛と星空以外には何もいらない」というシンプルな幸福感と、この飾らない和音の反復がよく合っています。難しい理論はなくても、「行って、戻ってくる」感覚さえつかめれば十分に楽しめる進行です。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジの2小節目に登場するFm6は、一瞬だけ景色が翳るような響きの和音です。歌詞でいえば「夕暮れの風が甘いロマンスを囁く」という、少しロマンティックな余韻を帯びた場面と重なります。その後は再び馴染みのある進行へ戻り、最後のAセクションへとなめらかに橋渡しされます。
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Vincent Youmans ヴィンセント・ユーマンズ(1898–1946)
ニューヨーク生まれ。裕福な帽子製造業者の家に育ちましたが、家業を継がずティン・パン・アレーの世界に飛び込みました。短い音のフレーズを繰り返し変奏しながら曲を組み立てる手法を得意とし、「Tea for Two」「I Want to Be Happy」「More Than You Know」などのスタンダードを残しました。惜しくも結核のため47歳で早世しましたが、その旋律は今も世界中で歌い継がれています。作詞のハロルド・アダムソン(1906–1980)とマック・ゴードン(1904–1959)は、それぞれ映画音楽の分野で数多くのヒット曲を手がけた名リリシストです。