Jazz Standard — 1938
ディス・キャント・ビー・ラヴ
| 作詞 | Lorenz Hart(ロレンツ・ハート) |
|---|---|
| 作曲 | Richard Rodgers(リチャード・ロジャース) |
| 制作年 | 1938年 |
| 初演 | ミュージカル『The Boys from Syracuse』(1938年ブロードウェイ)でEddie AlbertとMarcy Westcottが歌唱 |
| キー | F(ヘ長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節・AABA形式 |
1938年、作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートの黄金コンビによって書かれた一曲です。シェイクスピアの喜劇『間違いの喜劇』を下敷きにしたミュージカル『The Boys from Syracuse(シラキュースから来た男たち)』のために作られ、劇中ではエディ・アルバートとマーシー・ウェストコットが歌いました。この曲のユニークな点は、当時のポピュラー・ソングによく見られた「恋は病のようなもの」という定番の表現を、逆手に取ってユーモラスに描いているところにあります。「めまいもしない、ため息もつかない、だからこれは恋のはずがない」と、恋の症状とされるものを次々と否定しながら、実はそれこそが本物の愛の証だったと気づいていく、軽妙な仕掛けの歌詞になっています。1938年末から翌年にかけて、ホレス・ハイト楽団やベニー・グッドマン楽団の録音がヒットし、以来ロジャース&ハート作品の中でも屈指の人気曲として定着しました。ロジャース&ハートの作品には皮肉めいたユーモアの効いた曲が多い中、この曲は数少ない「屈託のない、まっすぐな恋の喜び」を歌った一曲としても知られています。
歌の情景・意味
「これは恋のはずがない」と自分に言い聞かせながら、実はそれこそが紛れもない恋そのものだった——そんな、ちょっとした思い違いから始まるユーモラスな恋の歌です。世間でよく言われる「恋をするとため息が出る」「めまいがする」「心臓が止まりそうになる」といった症状が、自分にはまったく当てはまらない。だからこれは恋ではないはずだ——そう語り手は考えますが、実際にはとても幸せで、心臓は落ち着くどころか高鳴り続けている。皮肉屋として知られるロレンツ・ハートにしては珍しく、この曲には屈託のない、純粋な喜びがまっすぐに表現されています。深刻ぶらず、軽やかな機知で恋の喜びを描いた、聴いていて思わず微笑んでしまうような一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:F(ヘ長調) 形式:AABA(32小節)
軽快でウキウキとしたリズム感を生む、明快なツーファイブ進行が特徴です。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:ヘ長調の主和音を中心に、Gm7からC7へと進むツーファイブが軽快に繰り返されます。歌詞が「恋の症状のはずなのに、ちっとも当てはまらない」と次々に否定していく、少しコミカルなテンポ感と、この弾むような和音の動きがよく合っています。難しい転調はなく、明るく屈託のない響きをそのまま楽しむとよいでしょう。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジではAm7からD7へと進む部分で、少し違う方角を向いた響きが現れます。歌詞でいえば「心臓は止まりそうになんてならない、ほら、鼓動を刻んでいる」という、明るく茶目っ気のある一節と重なります。最後は再び主調のFmaj7へと戻り、最後のAセクションへとつながっていきます。
4 Freshmen and 5 Trombones
Four Freshmen(フォー・フレッシュメン)
1955年 / Capitol
4人のコーラスと5本のトロンボーンが織りなす、豊かなハーモニーが魅力です。
Stan Getz Plays
Stan Getz(スタン・ゲッツ)
1952年 / Clef
スタン・ゲッツのやわらかなテナーが、バラードを中心にじっくりと歌う初期の名盤です。
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Richard Rodgers リチャード・ロジャース(1902–1979)
ニューヨーク生まれ。ロレンツ・ハートとのコンビで1920〜30年代のブロードウェイを席巻し、後にオスカー・ハマースタイン2世とのコンビでは『サウンド・オブ・ミュージック』『王様と私』など数々のミュージカルの金字塔を生み出しました。アカデミー賞・グラミー賞・トニー賞・ピュリッツァー賞・エミー賞すべてを制覇した稀有な作曲家としても知られます。作詞のロレンツ・ハート(1895–1943)は機知に富んだ言葉遊びとほろ苦い恋の機微を描く才能で知られる名リリシストでしたが、本作では珍しく屈託のない明るいユーモアを見せています。