Jazz Standard — 1946
ゼイ・セイ・イッツ・ワンダフル
| 作詞 | Irving Berlin(アーヴィング・バーリン) |
|---|---|
| 作曲 | Irving Berlin(アーヴィング・バーリン) |
| 制作年 | 1946年 |
| 初演 | ミュージカル『Annie Get Your Gun』(1946年ブロードウェイ)でEthel MermanとRay Middletonが歌唱 |
| キー | F(ヘ長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節・AABA形式 |
1946年、作詞・作曲ともにアーヴィング・バーリンの手による、ミュージカル『Annie Get Your Gun(アニーよ銃をとれ)』のために書かれた一曲です。もともとこの作品の音楽は、名手ジェローム・カーンに依頼される予定でしたが、カーンが作業のためニューヨークに到着してまもなく、突然の脳出血によって世を去ってしまいます。急きょ後任を求められたバーリンは、当初「自分は物語を語る作曲家ではなく、単なる曲作りの職人だ」と一度は依頼を固辞したものの、リチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタイン2世の説得を受けて台本に目を通し、わずか数日のうちに、後の代表曲「There's No Business Like Show Business」を含む最初の楽曲群を携えて戻ってきたと伝えられています。劇中では主人公アニー・オークリーと恋の相手フランク・バトラーが、まだ確信の持てない恋心を探り合うように歌う場面で使われました。1946年だけで4組のアーティストによるヒットシングルが生まれ、以来モダン・ジャズ・カルテット、デイヴ・ブルーベック、サラ・ヴォーン、ジョン・コルトレーン&ジョニー・ハートマンなど、数多くのジャズ・ミュージシャンにも取り上げられる定番曲として親しまれています。
歌の情景・意味
「恋は素晴らしいものだと、皆が言う」——そんな、まだ恋に確信を持てずにいる人の、控えめで慎重な心情を歌った曲です。語り手は自分自身の実感としてではなく、「人々がそう言っている」という距離を置いた視点から恋を語り始めます。空に浮かぶ月、頬を染める頬——他人から聞いた恋の兆候の数々を、自分の身にも起きているのではないかと、恐る恐る確かめていくような構成です。ミュージカルの中では、まだ互いへの想いを言葉にしきれずにいる二人が、遠回しに気持ちを探り合う場面で歌われます。確信よりも戸惑い、情熱よりも静かな期待——そんな恋の始まりの繊細な感覚を、控えめな言葉遣いで丁寧にすくい取った一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:F(ヘ長調) 形式:AABA(32小節)
会話のように語りかける歌詞の性格に寄り添う、シンプルで落ち着いた和音進行です。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:ジャズの定番であるツーファイブの流れを、落ち着いた足取りで2回繰り返します。歌詞が「皆がそう言う」という距離を置いた語り口で恋を語る構成と、この控えめで規則正しい和音の反復がよく重なっています。派手な転調はなく、まっすぐで飾らない響きを味わうように聴くとよいでしょう。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジではAm7からD7へと進む部分で、Aセクションとは少し違う方角を向いた響きが現れます。歌詞でいえば「あなたも、皆が言っていることを分かっているはず」という、二人の気持ちがそっと近づいていく場面と重なります。旋律の音域は比較的狭くまとめられており、シンプルな伴奏でも歌詞の情感が十分に伝わる作りになっています。
I Just Dropped by to Say Hello
Johnny Hartman(ジョニー・ハートマン)
1963年 / Impulse!
ジョニー・ハートマンの深みのあるバリトンが、バラードをしっとりと包み込む一枚です。
Modern Jazz Quartet
Modern Jazz Quartet (MJQ)(モダン・ジャズ・カルテット)
編集盤
室内楽的な落ち着きを持つ、モダン・ジャズ・カルテットの演奏を集めた一枚です。
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Irving Berlin アーヴィング・バーリン(1888–1989)
帝政ロシア(現ベラルーシ)生まれ。幼少期に家族とともにアメリカへ移住し、独学で音楽を学びながら、20世紀アメリカを代表する作曲家・作詞家へと成長しました。『Annie Get Your Gun』は、当初本人が「物語を語る作曲家ではない」と固辞しながらも引き受けた作品でしたが、結果的に9曲もの人気曲を生み出すという、ブロードウェイ史上でも稀な大成功を収めました。「They Say It's Wonderful」はその中でも、控えめで詩情豊かな旋律が光る一曲です。同じ作品からは「There's No Business Like Show Business」も生まれています。