Jazz Standard — 1937
ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー
| 作詞 | Ira Gershwin(アイラ・ガーシュウィン) |
|---|---|
| 作曲 | George Gershwin(ジョージ・ガーシュウィン) |
| 制作年 | 1937年 |
| 初演 | 映画『Shall We Dance』でFred Astaireが歌唱(Ginger Rogersに向けて歌う場面) |
| キー | E♭(変ホ長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節・AABA形式 |
1937年、ガーシュウィン兄弟——作曲のジョージと作詞のアイラ——による共作として生まれた一曲です。映画『Shall We Dance(踊らん哉)』のために書かれ、フレッド・アステアが霧に包まれたニュージャージーからマンハッタンへ向かうフェリーの甲板で、隣に静かに座るジンジャー・ロジャースに向けて歌う場面で使われました。アステア&ロジャースの名コンビにしては珍しく、この曲にはダンスの振り付けが一切つけられず、ただ歌のみで演じられています。二人が実際にこの曲に合わせて踊る場面は、後の1949年の最後の共演作『The Barkleys of Broadway』まで持ち越されることになりました。公開からわずか2か月後、ジョージ・ガーシュウィンは脳腫瘍により38歳の若さで急逝しており、この曲は1937年度のアカデミー歌曲賞にも死後ノミネートされています(受賞は逃しました)。以来、ビリー・ホリデイ、フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルドなど数え切れないほどの歌手に取り上げられ、ガーシュウィン兄弟の代表作の一つとして今も愛され続けています。
歌の情景・意味
たとえ二人の道がここで分かれるとしても、共に過ごした日々の記憶だけは誰にも奪えない——そう歌う、喜びと切なさが入り混じった歌です。帽子のかぶり方、紅茶をすする仕草、ナイフの持ち方、夜が明けるまで踊り続けた夜——恋人の何気ない仕草や思い出の断片が、次々と愛おしく描かれていきます。「いいえ、それだけは誰にも奪えない」というリフレインが繰り返されることで、離別の悲しみよりも、確かにそこにあった愛の記憶そのものへの静かな誇りが際立っていきます。映画の文脈では、別れを予感しながらも相手への想いを伝える場面で歌われ、喜びと哀しみが同時に存在する、大人の恋の複雑な感情をすくい取った一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:E♭(変ホ長調) 形式:AABA(32小節)
ガーシュウィンらしい、なめらかで詩情豊かなツーファイブ進行が特徴です。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:おなじみのツーファイブの流れを、落ち着いた足取りで2回繰り返します。歌詞が「帽子のかぶり方」「紅茶をすする仕草」と、恋人の思い出をひとつずつ丁寧に数え上げていく構成と、この規則正しい和音の反復がよく重なっています。急がず、一つひとつの記憶を慈しむように聴くとよいでしょう。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジは「この凸凹だらけの恋の道で、もう会えないとしても」という、歌詞の中でも特に感傷的な一節にあたります。和音自体はAセクションと近い性質を保ちながらも、歌詞の内容とともに、より深い想いが込められる部分です。最後は再び主調のE♭maj7へと帰り、最後のAセクションへとつながっていきます。
A Swingin' Affair!
Frank Sinatra(フランク・シナトラ)
1957年 / Capitol
ネルソン・リドルの編曲で、シナトラが勢いよくスウィングしたキャピトル期の代表作です。
Ella and Louis
Ella Fitzgerald & Louis Armstrong(エラ・フィッツジェラルド&ルイ・アームストロング)
1956年 / Verve
二大スターが共演したデュエット・アルバムの金字塔。対照的な二人の声が、温かく溶け合います。
Art Pepper Meets the Rhythm Section
Art Pepper(アート・ペッパー)
1957年 / Contemporary
マイルス・デイヴィスのリズム・セクションと共演した、ペッパーの代表作。歌心あふれるアルトが冴えます。
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George Gershwin ジョージ・ガーシュウィン(1898–1937)
ニューヨーク・ブルックリン生まれ。クラシック音楽とジャズ、ポピュラー音楽の境界を軽やかに越えた稀代の作曲家で、「Rhapsody in Blue」やオペラ『Porgy and Bess』などの傑作を残しました。「They Can't Take That Away From Me」は、公開のわずか2か月後、脳腫瘍のため38歳で急逝した彼の生涯最後期の作品の一つです。作詞を手がけた兄アイラ・ガーシュウィン(1896–1983)とは長年名コンビを組み、数々のブロードウェイ・ヒットとハリウッド映画音楽を共に生み出しました。