Jazz Standard — 1935
ジーズ・フーリッシュ・シングス
| 作詞 | Eric Maschwitz(筆名:Holt Marvell) |
|---|---|
| 作曲 | Jack Strachey(ジャック・ストレイチー)※Harry Linkが一部関与 |
| 制作年 | 1935年作曲(1936年発表) |
| 初演 | 1936年、ロンドンのレビュー『Spread It Abroad』でDorothy Dicksonが歌唱。同年1月にTurner Laytonが初録音 |
| キー | E♭(変ホ長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節・AABA形式(リスト・ソング) |
1935年、イギリス人の作詞家エリック・マシュウィッツが、当時BBCのバラエティ部門の責任者を務めながら「ホルト・マーヴェル」という筆名で書き上げた歌詞に、作曲家ジャック・ストレイチーが曲をつけた一曲です。ある日曜の朝、遅い時間帯に放送するBBCのラジオ番組のために急きょ必要になった歌詞を、マシュウィッツがロンドンの自宅で一気に書き上げ、電話でストレイチーに読み聞かせたという逸話が伝えられています。この曲は、彼が若き日に交際していた中国系アメリカ人女優アナ・メイ・ウォンと別れ、イギリスへ帰国した経験から生まれたとも言われています。1936年、ロンドンのレビュー『Spread It Abroad』でドロシー・ディクソンが歌い世に出ましたが、当初はすぐには評判にならず、マシュウィッツの代理人でさえ出版を渋ったといいます。しかしその後、ベニー・グッドマン楽団やビリー・ホリデイの録音がヒットし、1936年だけで5組の異なるアーティストがトップ10ヒットを記録するという異例の広がりを見せました。以来、ジャズの世界で愛され続ける定番曲として定着しています。
歌の情景・意味
別れた恋人を思い出させる、ささやかな品々を次々と数え上げていく「リスト・ソング」と呼ばれるタイプの歌です。口紅の跡がついた煙草、ロマンチックな街への航空券、電話が鳴るたびに一瞬息をのむ癖——そうした些細な日常の断片が、いつまでも心の奥にその人の記憶を呼び覚まし続けます。語り手は「もう忘れよう」と思いながらも、ふとした瞬間に忍び寄る愚かしいほどの未練(these foolish things)に、抗いきれずにいます。派手な感情表現ではなく、具体的でささやかな「もの」を積み重ねることで、失われた恋の重みをじわじわと伝えていく、詩的な構成が魅力の一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:E♭(変ホ長調) 形式:AABA(32小節)
物憂げで詩的な歌詞の雰囲気を、豊かな和声の移り変わりが丁寧に支えています。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:ジャズの定番であるツーファイブの流れを土台に、5〜6小節目でA♭maj7という柔らかい響きの和音が差し込まれます。歌詞が「口紅の跡」「航空券」と、ひとつずつ思い出の品を数え上げていく構成と、この丁寧な和音の移り変わりがよく重なっています。急がず、一つひとつの和音の余韻を味わうように聴くとよいでしょう。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジではCm7を起点に、一時的に別の調へ旅するような広がりのある進行が展開します。歌詞でいえば「あなたは来て、見て、私の心を奪っていった」という、運命的な出会いを振り返る場面と重なります。最後は主調のB♭7を経て、なめらかに最後のAセクションへと帰っていきます。
Ella Fitzgerald & Louis Armstrong
Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)
編集盤
エラとルイが共演した名演を集めた一枚です。二人の声の対比が楽しめます。
Thelonious Monk Trio
Thelonious Monk(セロニアス・モンク)
1952〜54年録音
モンクの初期のトリオ録音。独特の和音と間が際立つ一枚です。
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Jack Strachey ジャック・ストレイチー(1894–1972)
イギリス生まれ。「These Foolish Things」はエリック・マシュウィッツとの初めての共作であり、この曲の大ヒットをきっかけに、その後もイギリスのポピュラー音楽界で活躍しました。1940年代以降は軽音楽(ライト・オーケストラ音楽)の作曲にも力を注いでいます。作詞のエリック・マシュウィッツ(1901–1969)は「ホルト・マーヴェル」の筆名で、「A Nightingale Sang in Berkeley Square」など英国を代表する名曲の歌詞も手がけた、BBCの要職も務めた多才な人物でした。