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Jazz Standard — 1930

Them There Eyes

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ゼム・ゼア・アイズ

作詞William Tracey(ウィリアム・トレイシー)
作曲Maceo Pinkard & Doris Tauber(マシオ・ピンカード/ドリス・タウバー)
制作年1930年
初演Gus Arnheim楽団による紹介。1931年の映画『Let's Do Things』でも使用
キーF(ヘ長調)
拍子4/4拍子・32小節・ABAC形式(一般的なAABAとは異なる構成)

※この曲の形式について:「Them There Eyes」は、一般的なジャズ・スタンダードに多い32小節のAABA形式ではなく、A-B-A-Cという構成を持つ点でやや珍しいタイプの曲です。8小節のセクションが4つ連なる形ですが、3番目のセクションでAが再登場した後、最後は新しいCセクションで締めくくられます。当ページのコード進行解説では、最初のAセクションと、曲の締めくくりとなるCセクションを取り上げています。

1930年、マシオ・ピンカード、ドリス・タウバー、ウィリアム・トレイシーの3人の共作として生まれた一曲です。ピンカードは「Sweet Georgia Brown」の作曲者としても知られる人物で、本作もその軽快で親しみやすいメロディに特徴があります。ガス・アーンハイム楽団によって世に紹介され、1931年公開の映画『Let's Do Things』では、主演のザス・ピッツとテルマ・トッドが楽器店を舞台にこの曲を演じる場面で使われました。同じ1931年、ルイ・アームストロングやデューク・エリントンによる録音も残されていますが、この曲を真にジャズの定番曲として不動のものにしたのは、1939年のビリー・ホリデイによる録音です。テナー・サックスのレスター・ヤングを伴奏に迎えたこの盤は、今なお決定的な名演として語り継がれています。軽やかでスウィング感あふれるメロディは、ジャム・セッションの定番としても長く愛され、ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリをはじめとするジプシー・ジャズの奏者たちにも好んで取り上げられてきました。

歌の情景・意味

相手の瞳に一目で恋に落ちてしまった——そんな軽やかで陽気な恋の歌です。「あの瞳(them there eyes)」という、あえてくだけた言い回しのタイトルからして、洗練された恋の詩というより、庶民的でユーモラスな口説き文句に近い味わいがあります。輝く瞳、弾けるような視線に、語り手はすっかり心を奪われてしまいながらも、同時にその瞳が「トラブルの種にもなりかねない」と、少しおどけた調子で警戒心も覗かせます。深刻な愛の告白というより、目と目が合った瞬間のときめきを軽快なテンポに乗せて描いた、陽気でチャーミングな一曲です。

※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。

I fell in love with you the first time I looked
Into them there eyes,
You've got a certain little way of flirtin'
With them there eyes.
They make me feel happy, they make me feel blue,
Within a minute, I'm right up in the heavens,
If you would leave me, I'd have no place to go,
'Cause you got me trapped in them there eyes.
I fell in love with you the first time I looked
Into them there eyes,
You've got a certain little way of flirtin'
With them there eyes.
Now, when we're apart, I know that you're not blind,
So please keep a-flashing them there eyes on me,
'Cause when you're sighing, sighin' those eyes on me,
There'll never be no other guys for me.

キー:F(ヘ長調) 形式:ABAC(32小節)
スウィング時代らしい明快な和音進行で、テンポよく弾む雰囲気を作り出しています。

A セクション(1〜8小節)

F6
F6
C7
C7
F6
Dm7
Gm7
C7

▶ ポイント:ヘ長調の主和音とC7(ドミナント)を行き来する、非常に素直で分かりやすい進行です。難しい転調や複雑な和音はほとんどなく、スウィング特有の弾む感覚を出しやすい構成になっています。このセクションはA-B-A-Cの中で2回登場するため、まずこの8小節をしっかり覚えると曲全体の骨格がつかみやすくなります。

C セクション(締めくくり・25〜32小節)

F6
Am7
D7
Gm7
C7
F6
Gm7
C7

▶ ポイント:曲を締めくくるCセクションでは、Am7からD7へと進む部分で一瞬だけ違う色合いの響きが差し込まれます。歌詞でいえば「あなた以外の誰も目に入らない」という、最後の決め台詞にあたる部分。ここでぐっと感情を込めてから、最後は主和音のF6へ明るく着地します。ソロ回しの多い曲でもあり、演奏者によって細部のヴォイシングが変わることも少なくありません。

1

Lady Day

Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)

編集盤

ビリー・ホリデイの若き日の録音を集めた一枚。軽やかでみずみずしい歌声が味わえます。

2

Anita O'Day Sings

Anita O'Day(アニタ・オデイ)

編集盤

アニタ・オデイの歯切れのよい歌いまわしを楽しめる一枚です。

3

The Kansas City 6

Lester Young(レスター・ヤング)

1938年録音

レスター・ヤングがカンザスシティ・シックスで残した、歴史的な小編成録音です。

4

Djangology

Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)

編集盤

ジャンゴ・ラインハルトの超絶ギターを集めた一枚。ジプシー・ジャズの躍動感があふれます。

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Maceo Pinkard マシオ・ピンカード(1897–1962)

ウェストバージニア州生まれ。1910年代からニューヨークのティン・パン・アレーで活動し、アフリカ系アメリカ人の作曲家として初期のポピュラー音楽界で大きな成功を収めた人物の一人です。1925年のビルボード1位ヒット「Sweet Georgia Brown」の作曲者としても知られ、軽快で覚えやすいメロディを数多く残しました。共作者のドリス・タウバーはメロディに、ウィリアム・トレイシーは歌詞に関わったとされています。