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Jazz Standard — 1962

The Girl from Ipanema

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イパネマの娘

作詞Vinicius de Moraes(ヴィニシウス・ジ・モライス)/ Norman Gimbel(ノーマン・ギンベル、英語詞)
作曲Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)
制作年1962年
初演ジョアン・ジルベルト&アストラッド・ジルベルト(1963年録音)。スタン・ゲッツとの共演盤『Getz/Gilberto』(1964年)で世界的に広まる
キーF(ファ)メジャー(原曲)。ブリッジはG♭メジャーへと大胆に転調
拍子4/4拍子 ボサノヴァ 32小節 AABA形式

「イパネマの娘」は、ブラジルの作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンと詩人ヴィニシウス・ジ・モライスが1962年に共同制作したボサノヴァの名曲です。リオ・デ・ジャネイロのイパネマ海岸近くのバーに毎日通ううちに、近所に住む実在の美しい少女ヘロイーザ・エネイダ・メネゼス・パエス・ピントに着想を得て作られたと言われています。1964年、アメリカのテナーサックス奏者スタン・ゲッツとブラジルのギタリスト・ジョアン・ジルベルトの共演アルバム『Getz/Gilberto』に収録されると、ジョアンの妻アストラッド・ジルベルトが英語で歌ったこのバージョンが世界的な大ヒットとなりました。グラミー賞「年間最優秀レコード賞」を受賞し、ボサノヴァというブラジル音楽のジャンルを全世界に広める歴史的なきっかけとなりました。「Summertime」と並んで、世界でもっともカバーされた曲のひとつとして記録されており、その数は千種を超えると言われています。

歌の情景・意味

リオ・デ・ジャネイロのイパネマ海岸。陽光が降り注ぐ午後、背が高くて日焼けした美しい娘が海辺を歩いてくる。彼女が通り過ぎると、思わず「ああ」とため息が出てしまう——語り手は彼女に恋心を抱きながら、ただ見つめることしかできません。「彼女は歩く、まるで詩のように。海へと向かいながら、揺れるように」。しかし彼女は語り手には目もくれず、ただ美しく通り過ぎていく。届かない恋の切なさと、その美しさへの純粋な讃嘆が同居するこの歌詞は、ブラジル人の感性「サウダーデ(哀愁・郷愁)」そのものを体現しています。

※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。

Tall and tan and young and lovely
The girl from Ipanema goes walking
And when she passes, each one she passes goes "Ah"
When she walks she's like a samba
That swings so cool and sways so gently
That when she passes, each one she passes goes "Ah"
Oh, but I watch her so sadly
How can I tell her I love her
Yes, I would give my heart gladly
But each day when she walks to the sea
She looks straight ahead, not at me
Tall and tan and young and lovely
The girl from Ipanema goes walking
And when she passes I smile, but she doesn't see
She just doesn't see, she doesn't see

キー:Fメジャー 形式:AABA(32小節)
この曲の最大の聴きどころは、Bブリッジで突然G♭メジャー(ファ♯の調)へと転調する大胆な仕掛けです。FメジャーとG♭メジャーは「半音しか違わない隣り合わせの調」でありながら、その響きのギャップが鮮やかな驚きと色彩の変化をもたらします。ジョビンの天才的な和声感覚が光る構造です。

A セクション(1〜8小節)

F△7
F△7
G7
G7
Gm7
Gm7
G♭7
F△7

▶ ポイント:Fメジャーセブン(F△7)でゆったりと始まり、G7→Gm7という動きでじわじわと進みます。最後にG♭7(ファ♯セブン)という少し異国的な響きが挟まるのが味わい深いところ。このG♭7はF△7へ半音下がって解決する「裏コード」で、ボサノヴァらしいほのかな陰影を生み出しています。

B セクション(ブリッジ・17〜24小節)

G♭△7
G♭△7
B7
B7
F#m7
F#m7
D7
Gm7

▶ ポイント:「ああ、でも私は悲しそうに彼女を見つめるだけ……」という切ない部分がこのブリッジです。G♭メジャーセブン(G♭△7)から始まる遠い調への転調が、届かない恋の遠さを音で表現しているかのようです。最後のGm7でFメジャーの世界へそっと戻る着地感も絶妙です。

1

Getz / Gilberto

Stan Getz & João Gilberto(スタン・ゲッツ & ジョアン・ジルベルト)

1964年 — Verve Records

この曲の決定版にして、ボサノヴァの歴史を変えた伝説的名盤です。ジョアン・ジルベルトのギターと歌声、その妻アストラッド・ジルベルトの透き通った英語ヴォーカル、そしてスタン・ゲッツのシルキーなテナーサックスが三位一体となり、聴く者を南国の午後へと誘います。1964年グラミー賞「年間最優秀レコード賞」と「年間最優秀アルバム賞」をダブル受賞した歴史的作品です。

2

The Girl from Ipanema

Antonio Carlos Jobim(アントニオ・カルロス・ジョビン)

編集盤

ボサノヴァの生みの親ジョビンの名曲を収めた一枚。洗練された穏やかなサウンドです。

3

Lover's Concerto: Sarah Vaughan Best

Sarah Vaughan(サラ・ヴォーン)

編集盤

「ラヴァーズ・コンチェルト」をはじめ、サラ・ヴォーンの名唱を集めたベスト盤です。

4

Plays the Harry Warren & Vincent Youmans Song Book

Oscar Peterson(オスカー・ピーターソン)

1950年代 / Verve

ピーターソンが名作曲家たちの曲を取り上げたソングブック・シリーズの一枚です。

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Antonio Carlos Jobim アントニオ・カルロス・ジョビン(1927–1994)

アントニオ・カルロス・ブラジレイロ・ジョビン、通称「トム・ジョビン」は、リオ・デ・ジャネイロ生まれのブラジルの作曲家・ピアニスト・ギタリストです。1950年代後半、詩人ヴィニシウス・ジ・モライスや歌手ジョアン・ジルベルトとともに「ボサノヴァ」というジャンルを生み出しました。ボサノヴァとは、ブラジル伝来のサンバのリズムとアメリカのモダン・ジャズの和声感覚が融合した新しい音楽のスタイルです。「イパネマの娘」のほかにも「Wave」「Desafinado」「Corcovado(Quiet Nights)」「Água de Beber」など、今日でも世界中で演奏される名曲を数多く生み出しました。1964年にはニューヨークのカーネギー・ホールでのコンサートが大成功を収め、ボサノヴァは世界的ブームとなります。晩年はニューヨークを拠点に活動し、1994年に心臓病のため66歳で逝去。20世紀のポピュラー音楽に南米の息吹をもたらした最大の功労者として、その名は永遠に刻まれています。