Jazz Standard — 1938
スプリング・イズ・ヒア
| 作詞 | Lorenz Hart(ロレンツ・ハート) |
|---|---|
| 作曲 | Richard Rodgers(リチャード・ロジャース) |
| 制作年 | 1938年 |
| 初演 | ブロードウェイ・ミュージカル『I Married an Angel』にて、デニス・キングとヴィヴィアン・シーガルが歌唱 |
| キー | G(ト長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節AABA形式 |
「Spring Is Here」は1938年、作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートのコンビが、ブロードウェイ・ミュージカル『I Married an Angel(天使と結婚した男)』のために書いた楽曲です。ロジャースの流麗で美しいメロディーと、ハートの憂いを帯びた歌詞との対比が際立つ一曲として知られています。春という華やかな季節を歌いながら、心の中はなぜか浮かない——そんな屈折した内容が、明るいはずの旋律に乗せて歌われる意外性が、批評家や後世のミュージシャンから高く評価されてきました。ロジャースとハートは実は1929年にも同じ「Spring Is Here」という題名の楽曲(正式には「Spring Is Here in Person」)を発表していますが、こちらは全く別のミュージカルのための、内容も曲調も異なる作品で、標準的なジャズ・スタンダードとして知られているのはこの1938年版です。1958年にはフランク・シナトラが、離婚直後の傷心を込めて『Frank Sinatra Sings for Only the Lonely』に収録し、1959年にはビル・エヴァンスも名演を残すなど、ジャズ・ヴォーカル・器楽の両分野で愛される定番曲となっています。
歌の情景・意味
春が来て、花が咲き、鳥がさえずり、世界は恋の季節を迎えているはずなのに、なぜか自分の心だけは踊らない——そんな戸惑いを歌った曲です。「春が来た」と何度も繰り返しながら、そのたびに「なぜ心が浮き立たないのか」と自問自答していく構成が特徴的で、最後には「誰にも愛されていないからかもしれない」という寂しさへとたどり着きます。世間の華やかさと自分の孤独とのギャップを、皮肉と切なさを込めて描いた、ハートらしい憂愁の一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:G 形式:AABA(32小節)
ロジャースらしい流麗な旋律を支える、優美でありながら憂いを含んだ和音進行が特徴です。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:「Gmaj7」の華やかな響きから始まりながら、「Bbdim7」で一瞬影が差すような音の動きが、春らしい明るさの中に潜む物憂さを表現しています。美しい旋律線を支える丁寧な和声進行です。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジでは属調(ニ長調)へと一時的に転じ、明るさが増したかと思うと、すぐに下降していく和音の流れが「誰にも愛されていないのかもしれない」という歌詞の寂しさと重なります。
Sings Lullabys of Birdland
Chris Connor(クリス・コナー)
1954年 / Bethlehem
クリス・コナーのデビュー作。クールで少しハスキーな歌声が、都会の夜を感じさせます。
Standard Coltrane
John Coltrane(ジョン・コルトレーン)
1958年 / Prestige
コルトレーンがスタンダードを力強く吹き込んだプレスティッジ期の一枚です。
Portrait in Jazz
Bill Evans(ビル・エヴァンス)
1960年 / Riverside
エヴァンスのトリオが、ジャズの対話を理想的な形で示した名盤。スタンダードの解釈が際立ちます。
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Richard Rodgers リチャード・ロジャース(1902–1979)
アメリカのミュージカル作曲家。作詞家ロレンツ・ハートとのコンビで1920〜30年代に一時代を築き、ハートの死後はオスカー・ハマースタイン2世と組んで『オクラホマ!』『サウンド・オブ・ミュージック』などの傑作を生み出しました。「My Funny Valentine」「Blue Moon」など数多くのジャズ・スタンダードを作曲し、ミュージカル史上最も成功した作曲家のひとりとされています。