Jazz Standard — 1955
スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モースト
| 作詞 | Fran Landesman(フラン・ランデスマン) |
|---|---|
| 作曲 | Tommy Wolf(トミー・ウルフ) |
| 制作年 | 1955年 |
| 初演 | セントルイスのクラブ「クリスタル・パレス」にて発表。後に1959年のオフ・ブロードウェイ・ミュージカル『The Nervous Set』のために書かれた楽曲群のひとつとしても位置づけられた(正式上演版には未収録) |
| キー | Ab(変イ長調) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節AABA形式(複雑で洗練されたコード進行で知られる) |
「Spring Can Really Hang You Up The Most」は、詩人フラン・ランデスマンが夫の経営するセントルイスのナイトクラブ「クリスタル・パレス」で、専属ピアニストのトミー・ウルフに投げかけたひとつの問いから生まれました。T・S・エリオットの詩『荒地』の有名な一節「四月は最も残酷な月」を、当時の「ヒップ」な若者言葉でどう言い換えるかとランデスマンが尋ねたところ、ウルフが答えに詰まり、彼女自身が半ば冗談で「Spring can really hang you up the most(春は本当に人を落ち込ませる)」とつぶやいたのが始まりだったといいます。この言葉がそのまま曲のタイトルとなり、2人の10年にわたる共作の出発点となりました。後に彼らは1959年のミュージカル『The Nervous Set』でも共作しますが、この曲自体は正式な上演版には収録されませんでした。それでもエラ・フィッツジェラルド、サラ・ヴォーン、バーブラ・ストライサンドをはじめ数多くの歌手に取り上げられ、洗練されたコード進行と憂愁に満ちた歌詞で、ジャズ・ヴォーカルの重要なレパートリーとなっています。
歌の情景・意味
花が咲き、鳥がさえずり、誰もが恋に浮かれるはずの春——それなのに、なぜか自分の心だけは晴れず、むしろ深く沈み込んでしまう。そんな、季節の明るさと自分の内面とのずれを歌った曲です。世間が浮かれ立つ時期だからこそ感じる孤独や疎外感は、多くの人が密かに共感できる普遍的な感情です。皮肉とユーモアを交えながら、決して声高にならず、しみじみと打ち明けるように歌われるのがこの曲の魅力です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:Ab 形式:AABA(32小節)
ジャズ・ミュージシャンの間でも「非常に凝ったコード進行」として知られ、演奏者によって解釈が分かれることでも有名です。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:出だしから次々と転調していくような凝った和音の連なりが、この曲最大の特徴です。世間の明るさと自分の心のずれを表すように、和音も一筋縄ではいかない捻れを見せます。
B セクション(ブリッジ)
▶ ポイント:ブリッジでも遠い調へ寄り道をしながら進んでいく、聴きごたえのある展開が続きます。ジャズ演奏者の間では「初心者向けではないが、マスターする価値のある名曲」として知られる所以です。
Jackie and Roy
Jackie and Roy(ジャッキー&ロイ)
1955年 / Storyville
ジャッキー&ロイの息の合ったデュオ。2人の掛け合いが生む軽妙なハーモニーが魅力です。
Rah
Mark Murphy(マーク・マーフィー)
1961年 / Riverside
マーク・マーフィーの出世作。しなやかな歌声とスキャットで、ジャズ・ヴォーカルの粋を聴かせます。
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Tommy Wolf トミー・ウルフ(1925–1979)
アメリカのピアニスト・作曲家・編曲家。第二次世界大戦の従軍を経て、セントルイスのナイトクラブ「クリスタル・パレス」の専属ピアニストとして活動しました。詩人フラン・ランデスマンとの共作で「Spring Can Really Hang You Up The Most」「The Ballad of the Sad Young Men」など数々のジャズ・スタンダードを生み出し、ビート・ジェネレーションの空気を色濃く反映した独自の作風で知られています。