Jazz Standard — 1944
ラウンド・ミッドナイト
| 作詞 | Bernie Hanighen(バーニー・ハニガン)、Cootie Williams(クーティー・ウィリアムス) |
|---|---|
| 作曲 | Thelonious Monk(セロニアス・モンク) |
| 制作年 | 1944年(歌詞は1944年、器楽曲としての原曲は1940年代初頭) |
| 初演 | Cootie Williams(クーティー・ウィリアムス)楽団による演奏(1944年録音) |
| キー | E♭短調(原曲) |
| 拍子 | 4/4拍子・32小節・AABA形式 |
「'ラウンド・ミッドナイト」は、ジャズの世界で最も多くカヴァーされた曲のひとつとして知られる名曲です。作曲したのは、ニューヨーク出身のピアニスト、セロニアス・モンク。彼がこの曲の原型を作ったのは1940年代初頭のことで、当初は歌詞のない器楽曲でした。その後、クーティー・ウィリアムスとバーニー・ハニガンが歌詞をつけ、1944年に正式に楽譜が出版されました。
モンクのピアノは、その独特な「間(ま)」の取り方と、わざと音をぶつけるような不思議な和声感覚が特徴で、当時のジャズ界では異端とも見られていました。しかしその個性こそが、この曲に他にない暗く官能的な美しさを与えています。真夜中が近づく深夜の孤独と、去っていった恋人への想いを歌ったこの曲は、スローなテンポで演奏されることが多く、じっくりと聴き込むほどにその奥深さが増していきます。1956年にマイルス・デイヴィスが録音した演奏は特に有名で、世界中のジャズファンにこの曲の魅力を広めるきっかけとなりました。
歌の情景・意味
深夜0時が近づく頃("'round midnight")、主人公は眠れぬまま一人部屋に座っています。かつて共に過ごした愛する人はもうそこにいない。真夜中という時間は、普通ならば休息の時ですが、この歌の中では孤独と後悔が最も深く押し寄せてくる瞬間として描かれています。窓の外には暗い夜が広がり、思い出だけが静かに漂う——そんな切なく美しい情景が、モンクの音楽とともに静かに語られます。愛を失った後の深夜の時間がいかに長く、重く感じられるか。この曲はそのやるせない感情を、言葉と音楽の両方で見事に表現しています。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
Verse A(Aセクション)
Verse A(繰り返し)
Bridge(Bブリッジ)
Verse A(最終)
キー:E♭短調 形式:AABA(32小節)
モンク独自のクロマティックな(半音階的な)動きと、予想外の転調が特徴のコード進行です。ビバップ以前のジャズには珍しい暗くて複雑な和声が、この曲の神秘的な雰囲気を作り出しています。
A セクション(1〜8小節)
▶ ポイント:最初のE♭m(ミ♭マイナー)から始まる暗いトーンが印象的です。B♭7♭9(♭9の音が加わった緊張感のある和音)からE♭mへ戻る流れが、この曲の物悲しさを演出しています。「♭9」はちょっと不安定でざわざわした響きの和音ですが、それがモンクらしい味です。
A セクション後半(9〜16小節)
▶ ポイント:Fm7♭5(ファ・ラ♭・ド♭・ミ♭の4音からなる不安定な和音)が登場し、さらに暗い雰囲気になります。A♭mへの解決に向かう流れは、まるで深夜の闇の中で一瞬だけ光が見えるような感覚を与えます。
B セクション(ブリッジ、17〜24小節)
▶ ポイント:ブリッジはG♭(ソ♭)のメジャーキーから始まり、Aセクションよりも少し明るい雰囲気になります。しかしG7♭9でふたたび緊張感が高まり、最終Aセクションへの戻りを準備します。この明暗のコントラストがドラマティックな効果を生みます。
A セクション(最終、25〜32小節)
▶ ポイント:最初のAセクションとほぼ同じ進行で締めくくられます。最後はE♭mで静かに終わり、解決するような、しないような曖昧な余韻を残します。モンクはあえてすっきりとした解決を避け、聴く者の心に問いかけを残すのです。
'Round About Midnight
Miles Davis(マイルス・デイヴィス)
1957年 / Columbia
マイルスがコロムビアに移籍して放った代表作。ミュートのトランペットが夜の空気を描きます。
Something Cool
June Christy(ジューン・クリスティ)
1955年 / Capitol
ジューン・クリスティの代表作。クールで落ち着いた歌声が、深夜の空気を思わせます。
Incredible Jazz Guitar
Wes Montgomery(ウェス・モンゴメリー)
1960年 / Riverside
ウェス・モンゴメリーの名を一躍知らしめた代表作。親指で弾くオクターブ奏法の魅力が詰まっています。
Our Man in Paris
Dexter Gordon(デクスター・ゴードン)
1963年 / Blue Note
パリで録音されたデクスター・ゴードンの名盤。バド・パウエルとの共演でも知られます。
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Thelonious Monk セロニアス・モンク(1917–1982)
ノースカロライナ州生まれ、ニューヨーク育ちのジャズピアニスト・作曲家。1940年代のビバップ革命を担った中心人物のひとりながら、その個性的な演奏スタイルは当初なかなか理解されませんでした。音をわざとぶつけるような不協和音、独特の間(ま)の取り方、指を伸ばしたままピアノを叩く独自の奏法——これらはすべてモンクが意図的に作り上げたスタイルです。「'ラウンド・ミッドナイト」「ストレート、ノー・チェイサー」「ブルー・モンク」など、今日もスタンダードとして愛される名曲を数多く残しました。晩年は表舞台から引退しましたが、彼の音楽はジャズの歴史に永遠に刻まれています。