Jazz Standard — 1956
ケ・セラ・セラ(なるようになる)
| 作詞・作曲 | Jay Livingston(ジェイ・リヴィングストン)、Ray Evans(レイ・エヴァンス) |
|---|---|
| 制作年 | 1956年 |
| 初演 | アルフレッド・ヒッチコック監督の映画「知りすぎていた男(The Man Who Knew Too Much)」(1956年)にてドリス・デイが歌唱。同年アカデミー賞主題歌賞を受賞 |
| キー | F長調(標準) |
| 拍子 | 4/4拍子・ワルツ風の3拍子セクションを含む変則構成 |
「ケ・セラ・セラ(なるようになる)」は、1956年にジェイ・リヴィングストンとレイ・エヴァンスが共作した曲で、アルフレッド・ヒッチコック監督の映画「知りすぎていた男」のために書かれました。主演女優ドリス・デイが映画の中で歌い、その年のアカデミー賞主題歌賞を受賞。発表と同時に世界的な大ヒットとなり、ドリス・デイの代名詞ともいえる一曲として今日まで愛され続けています。
タイトルの「ケ・セラ・セラ」はイタリア語・スペイン語風の響きを持つ言葉ですが、実際には文法的に正しいイタリア語やスペイン語の表現ではなく、作詞家たちが「なるようになる」という意味を持たせて創作した造語的なフレーズです。この曲はもともとポピュラー・ソングとして書かれたものですが、シンプルで親しみやすいメロディと、人生をありのまま受け入れる達観したテーマが、ジャズの演奏家たちにも好まれ、スタンダードとして取り上げられるようになりました。子供時代から大人になるまでの人生の節目を歌う構成も特徴的で、世代を超えて共感を呼ぶ普遍的な曲です。
歌の情景・意味
子供の頃、母親に「私は将来どうなるの? 美しくなれる? お金持ちになれる?」と尋ねた主人公。母親はこう答えます——「なるようになるのよ。未来を見ることは誰にもできない。なるようになるの」。やがて主人公自身も恋をし、自分の子供に同じ質問をされる。そして同じ答えを繰り返す——「なるようになるのよ」。世代から世代へと受け継がれる、人生に対する達観と優しさを歌った曲です。未来への不安に対して、「コントロールできないものは、ありのまま受け入れればいい」という穏やかな知恵が、シンプルな言葉とメロディで語られます。深刻にならず、しかし深い人生哲学を含んだこの曲は、聴くたびに肩の力がふっと抜けるような安心感を与えてくれます。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
Verse 1(子供時代)
Chorus(コーラス)
Verse 2(青春時代)
Chorus(コーラス・繰り返し)
Verse 3(親になって)
Chorus(最終コーラス)
キー:F長調 形式:Verse-Chorus形式(一般的なAABA形式とは異なる構造)
この曲はミュージカル風の物語性を持つ構造のため、一般的なジャズ・スタンダードの32小節AABA形式とは異なります。シンプルで親しみやすい長調の進行が中心で、子供にもわかるような明快さがこの曲の親しみやすさの核心です。
Verse(1〜8小節)— 語りかける部分
▶ ポイント:F(ファ長調)を中心としたシンプルなⅠ→Ⅳ→Ⅰ→Ⅴ7という基本的な進行です。「私はどうなるの?」という子供の素朴な質問にふさわしく、装飾の少ない率直な和声で物語が始まります。複雑な仕掛けがないからこそ、誰もが安心して聴き始められる入り口になっています。
Chorus 前半(9〜16小節)— 「ケ・セラ・セラ」のテーマ
▶ ポイント:F→Dm(レ短調)という長→短の小さな揺れが、「未来を見ることは誰にもできない」という歌詞の不確かさをほんのり表現します。しかしすぐにBb(シ♭長調)→Fと長調に戻り、深刻にならずに前向きな姿勢を保ちます。Gm7→C7はFへ戻るツー・ファイブで、曲全体の安定した心地よさを支えています。
Chorus 後半(17〜24小節)— 結びの部分
▶ ポイント:前半とほぼ同じ流れを繰り返し、最後はBb→F→C7→Fという素直な進行で締めくくられます。「ケ・セラ・セラ、なるようになる」という結びの言葉と、迷いのないFへの着地が完全に一致しており、聴く人に安心感と納得感を残します。ジャズ的な複雑さよりも、童謡やフォークソングに通じる「まっすぐな伝わりやすさ」が、この曲の和声設計の核心です。
演奏上の工夫 — ジャズ・アレンジでの発展
▶ ポイント:ジャズ演奏家がこの曲を取り上げる際は、シンプルな三和音をセブンス・コードに置き換え、Em7♭5→A7のような新たな「ツー・ファイブ」を挿入することがよくあります。素朴な原曲のメロディに、ジャズらしい洗練された和声を重ねることで、童謡的な親しみやすさとジャズの奥深さが同居する独自の演奏が生まれます。
Jay Livingston & Ray Evans ジェイ・リヴィングストン&レイ・エヴァンス
ジェイ・リヴィングストン(1915–2001、ペンシルベニア州生まれ)とレイ・エヴァンス(1915–2007、ペンシルベニア州生まれ)は、ペンシルベニア大学時代に出会って以来、半世紀以上にわたって作曲・作詞のコンビとして活動したアメリカの音楽家です。「ケ・セラ・セラ」のほかにも「シルバー・ベルズ」(クリスマス・スタンダードの代表曲)、「モナ・リザ」(アカデミー賞受賞曲)など、数多くのヒット曲を世に送り出しました。アカデミー賞主題歌賞を3回受賞しており、ハリウッド映画音楽史において最も成功した作詞・作曲コンビのひとつとして知られています。二人の作品はシンプルでありながら普遍的なテーマを持つことが特徴で、「ケ・セラ・セラ」が示すような、人生に対する温かく達観したまなざしは、彼らの作風全体に通じる魅力です。