Jazz Standard — 1959
マイ・フェイバリット・シングス
| 作詞 | Oscar Hammerstein II(オスカー・ハマースタイン二世) |
|---|---|
| 作曲 | Richard Rodgers(リチャード・ロジャース) |
| 制作年 | 1959年 |
| 初演 | ミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』(1959年ブロードウェイ初演、マリア役:メアリー・マーティン) |
| キー | Eマイナー(ジャズ演奏ではEマイナーとEメジャーを交互に使用) |
| 拍子 | 3/4拍子(ワルツ) 32小節 AABA形式 |
「マイ・フェイバリット・シングス」は、1959年にブロードウェイで初演されたミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌として誕生しました。作詞はオスカー・ハマースタイン二世、作曲はリチャード・ロジャース、二人が組んだ黄金コンビによる最後の傑作ミュージカルの一曲です。劇中では家庭教師のマリアが嵐の夜に怯える子どもたちを慰めるために歌うという場面で使われ、「雨粒やバラ、銅色のやかん…好きなものを思い浮かべれば、怖くなくなる」という温かいメッセージが込められています。1965年の映画版ではジュリー・アンドリュースが歌い、世界中にその名が知られるようになりました。そして1961年、テナーサックスの革命児ジョン・コルトレーンがこの曲をジャズに編曲し、まったく異なる深みと緊張感を持つ名演を残したことで、ジャズスタンダードとして不朽の地位を築きました。ワルツのリズムとモーダルなハーモニーが生み出す独特の浮遊感は、今も多くのジャズミュージシャンを魅了し続けています。
歌の情景・意味
嵐の激しい夜、子どもたちが雷に怯えてマリアの部屋に駆け込んでくる。マリアは子どもたちに「怖いときは、自分の好きなものを思い浮かべれば大丈夫」と教えます。薔薇の花びら、ひげが生えた子猫、銅のやかんと温かいミトン、茶色の紙袋に包まれたプレゼント……歌われるのは、ごく日常の中にある小さな幸せです。悲しいときや落ち込んだとき、こんな「お気に入りのもの」を心に思い描くだけで、気持ちがすっと軽くなる。シンプルだけれど普遍的なこのメッセージが、世代を越えて人々の心をとらえてきました。コルトレーンのジャズ版では、この優しい子守唄がモーダルな即興演奏によって神秘的な祈りの音楽へと変容し、まったく別の感動を生み出します。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
Raindrops on roses and whiskers on kittens
薔薇の花びらに落ちる雨粒、子猫のひげ
Bright copper kettles and warm woolen mittens
輝く銅のやかん、温かなウールのミトン
Brown paper packages tied up with strings
紐で結ばれた茶色の紙の包み
These are a few of my favorite things
これが私のお気に入りのほんの一部
Cream-colored ponies and crisp apple strudels
クリーム色の子馬、パリパリのアップルシュトゥルーデル
Doorbells and sleigh bells and schnitzel with noodles
ドアのベル、そり鈴、麺つきのシュニッツェル
Wild geese that fly with the moon on their wings
翼に月明かりを乗せて飛ぶ野生の雁
These are a few of my favorite things
これが私のお気に入りのほんの一部
Girls in white dresses with blue satin sashes
青いサテンのリボンをつけた白いドレスの少女たち
Snowflakes that stay on my nose and eyelashes
鼻やまつ毛の上でとどまる雪の結晶
Silver-white winters that melt into springs
やがて春へと溶けていく銀白色の冬
These are a few of my favorite things
これが私のお気に入りのほんの一部
When the dog bites, when the bee stings
犬に噛まれたとき、蜂に刺されたとき
When I'm feeling sad
悲しい気持ちになったとき
I simply remember my favorite things
私はただ、お気に入りのものを思い出す
And then I don't feel so bad
そうすれば、それほど辛くなくなる
キー:Eマイナー/Eメジャー 形式:AABA(32小節)
この曲の最大の特徴は、マイナーで始まってメジャーに転じるという独特の構造です。Aセクションはひんやりとした短調の雰囲気、Bブリッジは長調の明るさと解放感を持ちます。コルトレーンはこの対比を活かし、モーダルな即興演奏で幻想的な世界を作り上げました。
A セクション(マイナー部分・1〜8小節)
▶ ポイント:まずEマイナー(短調)で「雨粒や子猫のひげ」といった素朴な情景を描きます。Cメジャーセブン→Aマイナーセブン→D7→Gメジャーセブンという流れで、ふんわりと着地します。ワルツのリズムに乗って3拍子のうねりを感じながら聴くと、この進行の優雅さがよくわかります。
A セクション(メジャー転換・9〜16小節)
▶ ポイント:同じメロディーが今度はEメジャー(長調)で演奏されます。短調から長調への転換がこの曲のマジック。「暗い気持ちも好きなものを思い出せば明るくなれる」という歌詞のメッセージを、和声の変化がそのまま表現しています。
B セクション(ブリッジ・17〜24小節)
▶ ポイント:「犬に噛まれたとき、蜂に刺されたとき……」というブリッジは、F#マイナーセブン→B7→Eメジャーセブンという動きが繰り返されます。V7→Iという「解決」の動きが心地よく、「そうすればそれほど辛くなくなる」という歌詞の着地感と見事に一致しています。
Greatest John Coltrane
John Coltrane(ジョン・コルトレーン)
編集盤(2CD)
コルトレーンの代表的な名演を集めたベスト盤。入門にも最適な一組です。
The Best of Manhattan Jazz Quintet
Manhattan Jazz Quintet(マンハッタン・ジャズ・クインテット)
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Lover's Concerto: Sarah Vaughan Best
Sarah Vaughan(サラ・ヴォーン)
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Midnight Mood
Mark Murphy(マーク・マーフィー)
1967年 / MPS
ヨーロッパで録音したマーク・マーフィーの作品。夜にぴったりの洒落た歌声が魅力です。
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Richard Rodgers & Oscar Hammerstein II リチャード・ロジャース & オスカー・ハマースタイン二世
リチャード・ロジャース(1902–1979)とオスカー・ハマースタイン二世(1895–1960)は、20世紀アメリカのミュージカル史を塗り替えた黄金のコンビです。『オクラホマ!』(1943年)に始まり、『回転木馬』『南太平洋』『王様と私』『サウンド・オブ・ミュージック』と、次々に傑作を世に送り出しました。「My Favorite Things」を含む『サウンド・オブ・ミュージック』は、1959年にブロードウェイで初演された二人の最後のコラボレーション作品です。ハマースタインはその翌年1960年に世を去りましたが、二人の残した楽曲は今もジャズスタンダードとして世界中で演奏され続けています。