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Jazz Standard — 1936

I've Got You Under My Skin

お気に入り

アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン

作詞・作曲Cole Porter(コール・ポーター)
制作年1936年
初演映画「Born to Dance(踊る騎士)」(1936年)でヴァージニア・ブルースが歌唱。同年アカデミー賞主題歌賞にノミネート
キーE♭長調(標準)
拍子4/4拍子・56小節・ABAB形式(拡張型)

「アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン」は、アメリカ音楽史を代表する作詞・作曲家コール・ポーターが1936年に書いた曲で、映画「踊る騎士(Born to Dance)」のために制作されました。初演のアカデミー賞主題歌賞ノミネートこそ受賞には至りませんでしたが、その後の録音史においてこれほど多くの名歌手・演奏家が取り上げてきた曲は珍しく、まさに時代を超えた傑作といえます。

この曲の大きな特徴は、一般的な32小節のスタンダードより長い、56小節という拡張された構造を持つことです。コール・ポーターはメロディと歌詞を繰り返すたびに少しずつ感情を高めていく手法を取り、最後のクライマックスに向けて曲全体が大きく盛り上がっていくように設計しています。この「じわじわと高まる」構造が、フランク・シナトラをはじめとする多くの歌手のドラマティックな演奏と相性抜群でした。ネルソン・リドルの名編曲によるシナトラの1956年録音は特に有名で、中盤のトロンボーン・ソロが炸裂する瞬間はジャズ・ポップス史上最もスリリングな場面のひとつとして語り継がれています。

歌の情景・意味

「アンダー・マイ・スキン(肌の下に)」とは、もはや体の一部になってしまったほど深く入り込んでいる、という意味のイディオムです。愛する人の存在が、肌の奥まで染み込んでしまっている——そこから逃れようとしても逃れられない、どうしようもない愛の虜になってしまった心情を歌っています。理性は「やめろ」と警告する。「こんな恋は身を滅ぼすぞ」と。しかし感情はまったく言うことを聞かない——「それでも、あなたは私の肌の奥に入り込んでいる」。コール・ポーター特有の知的なウィットと、抑えきれない情熱が表裏一体となった、大人の恋愛歌の極致です。

※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。

A セクション①(第一の告白)

I've got you under my skin,
I've got you deep in the heart of me,
So deep in my heart that you're really a part of me,
I've got you under my skin.

B セクション①(理性の警告)

I'd tried so not to give in,
I said to myself, "This affair never will go so well."
But why should I try to resist when, darling, I know so well
I've got you under my skin?

A セクション②(欲望と葛藤)

I'd sacrifice anything, come what might,
For the sake of having you near,
In spite of a warning voice that comes in the night
And repeats and repeats in my ear:

B セクション②(理性の最後の叫び、そして屈服)

"Don't you know, little fool, you never can win,
Use your mentality, wake up to reality."
But each time I do, just the thought of you
Makes me stop before I begin,
'Cause I've got you under my skin.

キー:E♭長調 形式:ABAB拡張型(56小節)
E♭長調を基調とした、流れるような進行が特徴です。コール・ポーターらしいなめらかで品のある和声の動きで、同じパターンを繰り返しながら徐々に感情を高めていく構造になっています。特にB(サビ)セクションの終盤で出てくる半音下降(クロマティック・ダウン)の動きが、この曲に独特の「じわじわと高まる」切迫感を与えています。

A セクション(1〜16小節)— E♭長調の主題

E♭maj7
E♭maj7
Fm7
B♭7
Gm7
C7
Fm7
B♭7

▶ ポイント:E♭maj7(ミ♭長調の主和音)で幕を開け、Fm7→B♭7(E♭長調へのツー・ファイブ)でスムーズに循環します。Gm7→C7→Fm7という動きは「ツー・ファイブの連鎖」で、Gm7がCm行きのツー、C7がFm行きのファイブの役割を担います。「あなたは私の肌の奥に入り込んでいる」という繰り返しの告白と同様に、和音も心地よいループを作り出しています。

B セクション前半(17〜28小節)— 感情が高まる部分

A♭maj7
A♭maj7
A♭m6
A♭m6
E♭maj7
E♭7
A♭maj7
Adim7

▶ ポイント:A♭maj7(ラ♭長調)→A♭m6(ラ♭短調・6の和音)という長調から短調への移行が、「ずっと抵抗しようとしてきた」という葛藤の感情を音で表します。Adim7(ラ・ディミニッシュ)はここでの聴きどころで、4音が均等に並ぶ緊張感ある和音が次のセクションへの高まりを予告します。コール・ポーターはこのdim(ディミニッシュ)の使い方の名手として知られています。

B セクション後半(29〜40小節)— クライマックスへの半音下降

B♭m7
E♭7
A♭maj7
A♭maj7
Dm7♭5
G7
Cm
B♭7

▶ ポイント:B♭m7→E♭7→A♭maj7という流れはA♭長調へのツー・ファイブ・ワンです。続くDm7♭5(レ・ハーフ・ディミニッシュ)→G7→Cmという動きは短調的な色合いを帯び、「理性の声が耳もとで繰り返す」という場面の切迫感と見事に重なります。シナトラ版でトロンボーンが炸裂するのもこのあたりで、音楽が一気に頂点に向かって突き進みます。

最終A セクション(41〜56小節)— 屈服と結末

E♭maj7
Fm7
B♭7
E♭maj7
Fm7
B♭7
E♭
E♭(終止)

▶ ポイント:感情の嵐を経て、最後は穏やかにE♭長調の主和音に着地します。「だってあなたは私の肌の奥に入り込んでいるから」という結末の言葉と一致するように、和音も「あるべき場所」に収まります。嵐のあとの静けさのような終わり方が、この曲を聴き終えた後に漂う豊かな余韻を生み出しています。

1

Songs for Swingin' Lovers!

Frank Sinatra(フランク・シナトラ)

1956年 — Capitol Records

この曲の「決定版」として世界中で認められる名演。ネルソン・リドルが編曲したビッグバンドをバックに、シナトラが感情のドラマを完璧に描き切ります。特に中盤でミルト・バーンハートのトロンボーン・ソロが炸裂し、シナトラが呼応するように歌声を上げていく瞬間は、ポピュラー音楽史上最もスリリングな場面のひとつ。何十年経っても色あせることのない、永遠の名演です。

2

Black Coffee

Peggy Lee(ペギー・リー)

1953年 / Decca

ペギー・リーのジャズ・ヴォーカルの名盤。気だるく色っぽい歌声が夜の雰囲気を醸します。

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Cole Porter コール・ポーター(1891–1964)

インディアナ州ペルー生まれのアメリカ人作詞・作曲家。ハーバード大学法学部に入学するも音楽の道へ進み、のちにハーバード音楽学部でも学びました。1920〜50年代のブロードウェイ、ハリウッド映画の黄金期を彩った数多くの名曲を生み出し、「ナイト・アンド・デイ」「ビギン・ザ・ビギン」「イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト」「エブリタイム・ウィー・セイ・グッバイ」「エニシング・ゴーズ」など、今日も愛されるスタンダードが目白押しです。ポーターの歌詞の特徴は、洗練されたウィットと皮肉、そして大胆な表現——当時のアメリカ社会では刺激的すぎるとも受け取られた内容も含みます。1937年に落馬事故で両脚を複数箇所骨折し、その後35回以上の手術を受けながらも作曲活動を続けました。1964年に逝去するまで、アメリカン・ポピュラー音楽の最高峰として君臨し続けた不世出の才人です。