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Jazz Standard — 1935

Cheek to Cheek

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チーク・トゥ・チーク

作詞・作曲Irving Berlin(アーヴィング・バーリン)
制作年1935年
初演1935年、RKO映画「トップ・ハット」にてフレッド・アステア歌唱・ジンジャー・ロジャースとダンス。アカデミー賞主題歌賞ノミネート。
キーC major(ハ長調)
拍子4/4拍子 72小節・拡張AABA形式(各セクションが通常の2倍)

「チーク・トゥ・チーク」は、アーヴィング・バーリンが1935年のRKO映画「トップ・ハット」のために書き下ろした楽曲です。フレッド・アステアがジンジャー・ロジャースとともに踊るシーンで初めて披露されたこの曲は、映画公開とともに大ヒットとなり、アカデミー賞主題歌賞にもノミネートされました。タイトルの「Cheek to Cheek(頬と頬を寄せて)」はダンスで相手と密着する様子そのものを指し、音楽と映像が一体となって生み出す幸福感が、曲の魅力をさらに高めています。通常のジャズ・スタンダードが32小節で書かれることが多いのに対し、この曲は72小節という破格の長さを誇ります。それでも長さを感じさせないのは、バーリンの流れるようなメロディの力によるものでしょう。発表後90年を経た今もなお録音し続けるミュージシャンが絶えず、2014年にはトニー・ベネットとレディ・ガガがデュエット・アルバムのタイトル曲として取り上げ、若い世代にも広く知られる名曲です。

歌の情景・意味

愛する人と頬を寄せ合ってダンスを踊る、この上なく幸福なひとときを歌っています。「天国にいる気がする」という言葉で始まり、音楽が流れる中でふたりが寄り添うその瞬間の、心が浮き立つような喜びをひたすら純粋に描き続けます。「Cheek to Cheek(頬と頬を寄せて)」という言葉には、愛する人との物理的な近さと、心の近さが重なっています。バーリンの歌詞は難解な比喩を一切使わず、喜びをそのまま言葉にした直球の表現が特徴で、聴く人誰もが同じ場面を頭に思い浮かべることができます。悲しみも切なさもない、ただ純粋に幸せなだけの曲——ジャズ・スタンダードの中でこれほど晴れやかな気持ちになれる曲はそう多くありません。映画の中でアステアとロジャースが踊るシーンを思い浮かべながら聴くと、映像と音楽が溶け合う映画黄金時代の魔法を体感できます。

※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。

A セクション

Heaven, I'm in heaven,

And my heart beats so that I can hardly speak.

And I seem to find the happiness I seek

When we're out together dancing cheek to cheek.

B セクション(ブリッジ)

Oh I love to climb a mountain,

And to reach the highest peak.

But it doesn't thrill me half as much

As dancing cheek to cheek.

Oh I love to go out fishing

In a river or a creek.

But I don't enjoy it half as much

As dancing cheek to cheek.

A セクション(再現)

Dance with me, I want my arm about you.

The charm about you will carry me through to…

Heaven, I'm in heaven,

And the cares that hung around me through the week

Seem to vanish like a gambler's lucky streak

When we're out together dancing cheek to cheek.

キー:C major(ハ長調) 形式:拡張AABA(72小節)
通常の32小節スタンダードの約2倍の長さを持つ大曲ですが、メロディの自然な流れのおかげで演奏していても聴いていても長さを感じさせません。Cメジャーという弾きやすいキーで書かれており、ピアノ入門者にも取り組みやすい曲のひとつです。

A セクション前半(1〜8小節)

C
C
Dm7
G7
C
C / E
Dm7
G7

▶ ポイント:ハ長調の主和音(C)からツー・ファイブ(Dm7→G7)へと向かう、教科書的なほど明快な進行です。「Heaven, I'm in heaven」という歌詞の喜びをそのままコードが体現しているような、一点の曇りもない長調の輝きがあります。

A セクション後半(9〜16小節)

E7
E7
Am
Am
D7
D7
G7
G7

▶ ポイント:E7→Amという動きでイ短調方向へとさしかかり、曲に立体感が生まれます。「幸福の中にほんの少しの陰影」を加えるこの転換が、曲全体を単調にしない工夫です。D7→G7→Cへの解決が心地よく、聴くたびに「次もまた聴きたい」と思わせる力があります。

B セクション(ブリッジ・33〜48小節)

F
F
C / E
C / E
Dm7
G7
C
C7

▶ ポイント:ブリッジはF(ヘ長調の主音)から始まります。「山登りも好きだが、踊ることの方がずっと好き」という歌詞が続くこのセクションは、Aセクションとは異なる柔らかい光に包まれた雰囲気です。長大な曲の中間でリスナーに「一息」をつかせる役割を担い、最後のC7がふたたびAセクションへと誘います。

1

Rosemary Clooney Sings the Music of Irving Berlin

Rosemary Clooney(ローズマリー・クルーニー)

1984年 / Concord

アーヴィング・バーリンの名曲を、円熟したクルーニーが温かく歌い上げた作品。落ち着いた伴奏も心地よい一枚です。

2

The Art of Tatum

Art Tatum(アート・テイタム)

編集盤

超絶技巧で知られるピアノの巨人テイタムの演奏集。目まぐるしい速さと豊かなハーモニーに圧倒されます。

3

Sings The Irving Berlin Song Book

Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)

1958年 / Verve

フィッツジェラルドによるアーヴィング・バーリン作品集。優雅で洗練された歌声が魅力の定番盤です。

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Irving Berlin アーヴィング・バーリン(1888–1989)

ロシア系ユダヤ人の家庭に生まれ、5歳で家族とともにアメリカに移民したアーヴィング・バーリンは、101歳という長寿を全うしたアメリカン・ポップスの巨人です。正式な音楽教育をほとんど受けていながら、「アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド」(1911年)でいきなりの大ヒットを飛ばし、その後も「ホワイト・クリスマス」「ゴッド・ブレス・アメリカ」「ブルー・スカイ」など、アメリカ人なら誰でも知っている曲を次々と生み出しました。「チーク・トゥ・チーク」を含む「トップ・ハット」の楽曲群もその代表作のひとつです。ピアノは黒鍵しか弾けなかったため、専用のトランスポーズ機能付きピアノを特注したというエピソードも有名です。20世紀のアメリカの喜びと哀愁を、最も平易な言葉で最も美しいメロディにのせた作曲家として、その名は永遠に語り継がれるでしょう。