Jazz Standard — 1937
バイ・マイセルフ
| 作詞 | ハワード・ディーツ(Howard Dietz) |
|---|---|
| 作曲 | アーサー・シュワルツ(Arthur Schwartz) |
| 制作年 | 1937年 |
| 初演 | ブロードウェイ・ミュージカル『Between the Devil』にてジャック・ブキャナンが歌唱 |
| キー | ト短調(Gマイナー)とFメジャーを行き来する構成 |
| 拍子 | 4/4拍子・AABC形式(非定型)・ミディアム・バラード |
「By Myself」は、作曲家アーサー・シュワルツと作詞家ハワード・ディーツによる名コンビが1937年に手がけた作品で、同年のブロードウェイ・ミュージカル『Between the Devil』のために書かれました。主演のジャック・ブキャナンによって初めて歌われましたが、当初はそれほど知られた曲ではありませんでした。状況が一変したのは1953年、フレッド・アステアが映画『バンド・ワゴン』でこの曲を歌い踊ったときのことです。一気に注目を集め、同年8月にはビルボードチャートで第3位を記録する人気曲となりました。この曲が特に音楽的に興味深いのは、当時のポピュラーソングとしては珍しい「AABC」という非定型の形式を持つこと、そしてト短調とFメジャーという2つの調の間を行き来する、和声的にも複雑な構成を持っていることです。1963年にはジュディ・ガーランドが映画『アイ・クッド・ゴー・オン・シンギング』で歌い、その後も多くのジャズ・ミュージシャンに取り上げられてきました。
歌の情景・意味
この歌は、恋を失い、一人で生きていくことを決意した人の心境を描いています。ただ悲しみに沈むだけでなく、「自分自身に正直に向き合い、自分の力で道を切り開いていこう」という、ある種の強さと誇りも同時に表現されているのが特徴です。雲の下を歩くように、群衆の中にいてもひとりぼっちのように感じながらも、心に歌を教え込み、鳥のように自由に羽ばたいていこうとする――そんな決意が歌われます。後半では、恋やロマンスがもたらす喜びと笑いをあえて自分から手放し、それでも前を向いて、自分だけの世界を築いていこうとする姿が描かれます。孤独の寂しさと、自立への誇らしさ、その両方が同居する、複雑で深みのある一曲です。
※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。
キー:Gマイナー/Fメジャーを行き来する構成 形式:AABC(非定型)
短調から長調へと移ろう、揺れ動くような構成が最大の特徴です。悲しみと希望、孤独と自立――相反する感情が同居する歌詞の世界を、和声面からも巧みに支えています。
A セクション(前半・短調パート)
▶ ポイント:冒頭はト短調(Gマイナー)で始まり、「雲の下を歩いているように」という、どこか沈んだ心情に寄り添う響きを持っています。短調特有の物悲しさが、孤独を歩む主人公の姿を音楽的に映し出しています。
C セクション(後半・長調への転調パート)
▶ ポイント:後半でFメジャーへと転調することで、音楽全体の雰囲気がふっと明るくなります。「未知なるものに立ち向かい、自分だけの世界を築いていこう」という、前向きな決意を語る歌詞の場面と見事に重なり合い、悲しみから自立への心の変化を、調の移ろいそのもので表現しています。
Farmer's Market
Art Farmer(アート・ファーマー)
1956年 / New Jazz
柔らかく温かい音色で知られるトランペット奏者、アート・ファーマーの初期の代表作。ハード・バップの勢いと歌心がバランスよく聴けます。
Mal-1
Mal Waldron(マル・ウォルドロン)
1956年 / Prestige
ビリー・ホリデイの伴奏者としても知られるピアニスト、マル・ウォルドロンの初リーダー作。重く沈んだ独特のタッチがすでに表れています。
魅惑のリズム 1923-1930 Complete Recordings
Fred Astaire(フレッド・アステア)
編集盤
アステアによる往年の名唱・名演の数々を収めたコレクション。軽やかなダンスのリズム感が魅力です。
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Arthur Schwartz アーサー・シュワルツ(1900–1984)
アメリカ・ニューヨーク州ブルックリン出身の作曲家・映画プロデューサー。もとは弁護士として活動していましたが、作詞家ハワード・ディーツとのコンビでブロードウェイの世界に進出し、34年にわたり11作品を共作しました。「Dancing in the Dark」「That's Entertainment」など数々の名曲を残し、洗練されたメロディラインと、当時としては珍しい複雑な和声構成を取り入れた作風で、ジャズ・ミュージシャンたちからも高く評価されています。