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Jazz Standard — 1931

All of Me

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オール・オブ・ミー

作詞Seymour Simons(シーモア・サイモンズ)
作曲Gerald Marks(ジェラルド・マークス)
制作年1931年
初演1931年にポール・ホワイトマン楽団が初演。同年、ルース・エッティングとポール・ホワイトマンが別々に録音・発売し、たちまち大ヒットとなった。
キーC長調(演奏者によって移調されることも多い)
拍子4/4拍子 32小節 ABAC形式

「オール・オブ・ミー」は、1931年にジェラルド・マークスとシーモア・サイモンズが共同で書いたジャズ・ポップスの傑作です。発表直後からルース・エッティング、ルイ・アームストロング、ビリー・ホリデイといった当代一流のアーティストたちが競うように録音し、大西洋を越えて世界中で愛される曲となりました。明るく跳ねるようなメロディーとは裏腹に、歌詞の内容は「あなたに捨てられた私はもう何もかも失ってしまった」という失恋の嘆き。このギャップこそが長年にわたって多くのジャズミュージシャンを惹きつけてきた理由のひとつです。コード進行もジャズ学習者にとって必修とも言えるほど理にかなった構成で、今日もセッションの場で頻繁に演奏される定番中の定番スタンダードです。

歌の情景・意味

愛する人に捨てられた主人公が、皮肉とユーモアを交えながら自分の心情を吐露する失恋の歌です。「あなたは私の腕も唇も心も奪っておきながら、どうして去ってしまえるの?」——そう問いかける言葉には怒りよりも戸惑いと悲しみが滲んでいます。「私のすべてを持っていくなら、せめて私自身も連れていってくれ」というラストの訴えは、失恋の痛みを逆説的に表現した名文句として語り継がれています。明るいスウィングのリズムに乗せて切ない言葉が紡がれるところに、ジャズという音楽が本来持つ「笑いながら泣く」粋な精神が宿っています。

※掲載している英語歌詞は原詩の著作権に配慮し、内容を要約・再構成したオリジナルの言い換えです。正確な原詩は楽譜または正規音源でご確認ください。

All of me, why not take all of me?
Can't you see I'm no good without you?
Take my lips, I want to lose them,
Take my arms, I'll never use them.
Your goodbye left me with eyes that cry,
How can I go on, dear, without you?
You took the part that once was my heart,
So why not take all of me?

キー:C長調 形式:ABAC(各8小節・計32小節) 拍子:4/4
「All of Me」の最大の特徴は、冒頭からE7という「借用和音」が登場すること。Cメジャーの曲でありながら早々に短調の色彩を帯びたE7が現れ、そこから次々と転がり落ちるように進行していきます。ジャズのセッションでは必ず取り上げられる曲で、「コード進行の教科書」とも称されます。

A セクション(1〜8小節)

C
E7
A7
Dm
E7
Am
D7
G7

▶ ポイント:C(ハ長調の主和音)から始まりながら、すぐにE7→A7→Dmと「ドミナント連鎖」が続きます。E7はAマイナーへの、A7はDマイナーへの、それぞれ「セカンダリー・ドミナント」です。まるでドミノ倒しのように次々と和音が動いていく面白さを感じてみてください。

B セクション(ブリッジ・9〜16小節)

F
Fm
C
C
D7
D7
G7
G7

▶ ポイント:このセクションで最も耳を引くのが F→Fm という動き。明るいFメジャーから同じ音名の短調(Fマイナー)に瞬時に変わる「同主調への転換」で、「あなたの別れの言葉が…」という歌詞の影が差す瞬間と重なります。短調のFmがC長調の中に現れることで、一瞬だけ翳りが訪れる絶妙な効果です。

1

The Billie Holiday Story

Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)

編集盤 / Columbia

1930〜40年代のホリデイの名唱を集めた作品集。若き日の伸びやかな歌声と、独特の間合いで歌われるこの曲の魅力が詰まっています。

2

Dinah Washington at Newport

Dinah Washington(ダイナ・ワシントン)

1958年 / EmArcy

ニューポート・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音。ゴスペル仕込みの力強い歌声と会場の熱気が、ストレートに伝わってきます。

3

Connie Boswell and Original Memphis Five

Connie Boswell(コニー・ボズウェル)

編集盤

ボズウェル・シスターズで活躍したコニー・ボズウェルが、ディキシーランド・バンドと共演した一枚。明るく弾むリズムに乗った、はつらつとした歌声が楽しめます。

4

Swing Easy!

Frank Sinatra(フランク・シナトラ)

1954年 / Capitol

キャピトル移籍後のシナトラが、ネルソン・リドル楽団と軽快なスウィングを聴かせた初期の名作。小気味よいアレンジに乗った歌い口が見事です。

5

Pres and Teddy

Lester Young & Teddy Wilson(レスター・ヤング&テディ・ウィルソン)

1956年 / Verve

1930年代にビリー・ホリデイの伴奏で共演した二人が、久々に顔をそろえたセッション。くつろいだテナーと端正なピアノの対話が味わい深い一枚です。

6

Count Basie in Japan

Count Basie(カウント・ベイシー)

1978年 / Pablo

カウント・ベイシー楽団の来日公演を収めたライブ盤。分厚いホーン・セクションとベイシーの簡潔なピアノが、日本の聴衆を沸かせた様子が伝わります。

7

All of Me

Billie Holiday(ビリー・ホリデイ)

編集盤

ホリデイ特有の間の取り方と憂いを帯びた声が、身も心も捧げる愛の歌に、他にはない説得力を与えています。

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Gerald Marks & Seymour Simons ジェラルド・マークス&シーモア・サイモンズ

ジェラルド・マークス(1900–1997)はミシガン州出身のアメリカ人作曲家。シーモア・サイモンズ(1896–1949)はピアニスト・作詞家として活躍した。二人は1931年に「All of Me」を共同制作し、これが両者の代表作となった。マークスは97歳という長寿を全うし、晩年まで自作の著作権管理に積極的に取り組んだことでも知られている。「All of Me」は発表から90年以上を経た今もなお世界中のジャズシーンで演奏される、20世紀アメリカ大衆音楽の遺産のひとつです。